2015年7月28日火曜日

残留孤児や戦争花嫁…相模原と中国で写真展



 「戦争の昭和」の傷痕を撮り続ける相模原市の写真家、江成常夫さんが、この夏から秋にかけて地元・相模原と、同市友好都市の中国・無錫で相次いで写真展を開く。テーマは敗戦で中国に取り残された孤児や、戦後日本に駐留した米兵と結婚し海を渡った花嫁たち。国策の大義と、それに翻弄(ほんろう)された「棄民」の表情が、戦争の実相を語る。

 江成さんは相模原に生まれ育ち、毎日新聞の写真記者を経て1974年、フリーに。日本が侵略し傀儡(かいらい)国家「満州国」があった中国東北部、日米が激戦を交わしたサイパンやガダルカナル、ペリリューといった島々など、内外の痕跡をたどった。広島の被爆者や中国からの引き揚げ者ら何人もの聞き取りも行い、写真と融合させたフォトノンフィクションを確立させた。

 今回展示される孤児と花嫁について、江成さんは「どちらも長い間、国家から忘れられた存在だった」と説明する。花嫁は戦後まもなく米兵と結婚し移住した女性たちで、多くが実の親に猛反対され、米国では言葉と人種差別の壁に悩まされた。「戦争花嫁」という言葉にも当時、さげすむ意味合いがあった。

 一方、孤児は、旧満州に暮らした日本人がソ連軍の急襲を受け避難する際、親を亡くし、あるいは生き別れになった人たち。江成さんは、その中国で初めての写真展を開くことに特別の感慨を抱いている。「中国人は侵略者の子どもたちを助け、育ててくれた。侵略の謝罪と養父母への感謝の念を込めて訪中したい」

 無錫展は友好都市30周年記念の一環で、旧満州や戦争孤児を題材に10月上旬に開催される。相模原は2会場あり、市民ギャラリーの「母国は遥かに遠く」(今月30日〜8月4日)と、同市中央区宮下の「Garelly Hart」での「まぼろし国・満州と戦争孤児」(今月27日〜8月21日、土日と13〜17日は休館)。江成さんの講演もある。8月2日午後1時半から相模原市民ギャラリー、同15日午後7時からは杜のホールはしもと。写真展、講演会ともに無料。